「経験がなくても、応援される人間でいる」―大手スポーツクラブのインストラクターから多店舗・FC展開へ、コロナ禍の方向転換を経た独立トレーナーの軌跡

この記事で分かること

  • フリーランス期にどうやって集客の土台を作ったか
  • はじめての店舗運営では何が正解で、何が間違いだったか
  • 多店舗展開からコロナ禍での離脱、そして新規事業立ち上げまでの判断軸
  • 小規模フィットネス事業者が直面する「育成」という壁
  • 独立を目指す人に伝えたい、お金や経験よりも先にあるもの

取材対象者:
株式会社セルフィット 代表取締役社長
リベイロ アンドリアッチ カウアン氏
大手スポーツクラブでインストラクターとして資格取得後、22歳でフリーランストレーナーとして活動開始。24歳で六本木に初の実店舗を開業し、その後湘南で多店舗展開、コロナ禍を経て新規事業を立ち上げた経歴を持つ。

フリーランス期:人と会うことが、集客になった

カウアン氏がトレーナーとしての一歩を踏み出したのは、大手スポーツクラブでの在籍中だった。

22〜23歳でフリーランスとして活動を始めた頃は、東京体育館や区民センターなどで業務委託形式でパーソナルトレーニングを提供していた。同時に、フィットネス系アパレルのモデル案件やイベント企画にも積極的に関わり、そこでの出会いから新たな顧客を得るなど、結果として集客につながっていった。

この時期に広がった人脈が、後の六本木での出店につながった。

最初の店舗運営:「正解」と「ミス」

24歳のとき、融資を受け、六本木に初めての実店舗を開業した。月額賃料は37万円超。固定費の重さについて、カウアン氏はこう語る。

「当時は、月の半分くらいは賃料を払うためにセッションをこなしているように感じた」

業務委託のトレーナーを入れても集客力が伴わず、自分一人が現場とトレーニング提供を担う状態が続いた。振り返って見えてきた失敗点は明確だった。

「六本木というエリアを考慮すれば、プライシングはもっと高くすれば良かった」 「当時は広い1室でしたが、同じ時間に3枠くらいセッションできるようにすべきだった」

多店舗展開とコロナ禍:攻めの経営から方向転換へ

その後、広告会社との共同事業として、店舗展開を進め、最初の1年で約10店舗を一気に展開し、関東・関西で約80名のトレーナーを抱える規模に成長した。

「とにかく広告を大量に打って新規顧客を獲得する攻めのスタイルでした」

しかし、突然のコロナ禍で出店計画は全停止。そして、コロナ禍の影響により親会社の経営方針により、事業の軸足はパーソナルジム事業から新規事業へと移っていった。それを機に、カウアン氏は2021年4月に事業から離れる決断をした。

ピンチをチャンスに変えた、セルフィットの立ち上げ

事業から離れたことにより収入が途絶える状況の中、カウアン氏は「個室・完全貸切・3密回避」を訴求する新しいジムを企画した。そして、わずか2ヶ月後の2021年6月に、月額会員制の無人レンタルジムをオープンさせ、初月に、月額会員60名を獲得したという。

当初は「パーソナルトレーニングのマッチング」という見せ方だったが、コロナ禍の需要変化に合わせて「貸切個室ジム」という訴求へシフトしていった。

「お客さんが求めているものの変化に合わせて、僕らも見せ方をそっちにだんだん変えていった」

職人タイプかバランスタイプか

事業が拡大する中で、カウアン氏が一貫して課題と感じているのが人材育成だ。

「フィットネス業界は小規模店舗ほど1人がオールマイティに動く必要がある」

向いている人材像についても、自身の経験から具体的な観察を語る。

「”筋トレ大好き”という職人タイプはあまりパーソナルトレーナーに向いてないのではないでしょうか。お客様の悩みを解決したい、目標を達成した時に一緒に喜べる。それに対してやりがいを感じる、そういったタイプは非常にパーソナルトレーナーとして魅力ですし、店舗数を増やしていくようなオーナーは正にそのタイプが多いと思います」

独立を目指す人へ――応援される人間であること

最後にカウアン氏が語ったのは、お金や経験よりも先にある、ある一つの軸だった。

「人との出会いから六本木や湘南、その他関東での出店、セルフィット開業、FC展開へとつながっていきました。それは、大企業での経験やお金の有無ではなくて、応援される人かどうかだと思うんです。応援してもらえたからこそ、失敗と成功を重ねることができ、今につながっています」


時間も技術も、勤め先のために使ってきたという時期から、自分の店、自分の判断で事業を動かす立場へ。カウアン氏の歩みは、最初から計画通りだったわけではない。むしろ「できそうだな」という直感と、その時々の人とのつながりに支えられて進んできた道だった。

固定費の重さ、プライシングの見直し、人材育成の難しさ――これらは、独立した誰もが一度はぶつかる壁だ。カウアン氏のように、最初の店舗で痛みを伴って学ぶのか、それとも先に知っておくのか。その差だけで、最初の数年の苦労は大きく変わる。

from dot, to giant.


取材協力:株式会社セルフィット

株式会社セルフィットは、「健康をもっと身近に、もっと自由に」という想いで東京・神奈川エリアを中心に、女性専用24時間ジム、パーソナルジム、個室型レンタルジムを融合したシェアリングサービス「Selfit Private GYM SHARING」を展開している。

現在は複数店舗を運営するとともに、フランチャイズ本部として加盟店の募集・エリア拡大を進めている。

https://selfit-gymsharing.com/

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