「人生を動かす」を理念に掲げるトレーナー岡崎卓也氏。組織経験を土台にした堅実な開業と、大阪への新たな挑戦を取材しました
取材対象者:身体工房LIBERTEX 代表トレーナー 岡崎 卓也氏
兵庫県明石市出身。フィットネスクラブ勤務を経て独立し、神戸市中央区北長狭通に本店、西明石に2号店を構えるパーソナルジム「身体工房LIBERTEX」を運営。現在は法人向けセミナーや医療機関との連携にも取り組んでいる。
HP:https://www.libertex.training
instagram:https://www.instagram.com/taku.7.7.training/

フィットネスクラブ社員から、現場に立ちたくて後輩の店へ
岡崎卓也氏がフィットネス業界に足を踏み入れたのは、2008年頃。当時、パーソナルトレーナーという職業自体がまだ珍しかった時代だ。
- 高校時代からジムに通い、大学時代にはフィットネスクラブでアルバイトを経験
- 就職の選択肢は福祉かフィットネスの二択。「人に関わりたい」という思いからフィットネスクラブへ新卒入社
- 当時はパーソナルトレーナーとして独立するという選択肢自体が一般的ではなかった
フィットネスクラブの社員としてキャリアを積む中、ある転機が訪れる。
- 管理業務が中心になり、現場に立つ機会が減っていくことに違和感
- 後輩が経営する店を手伝う形で、その店の社員として転籍
- 直接顧客と関わりたいという思いが、この決断の軸だった
この「現場に立ちたい」という一貫した姿勢が、後の独立にもつながっていく。
背中を押した、プロテイン会社社長の一言
後輩の店で働く中、岡崎氏の独立を後押しする出会いがあった。
- 当時取引のあったプロテイン会社の社長から、独立を強く勧められる
- 「絶対した方がいい」という強いオーラに背中を押され、独立という選択肢を初めて具体的に考え始める
- 同時に、その社長から神戸エリアの市場情報を得る。パーソナルジムの検索需要はあるのに、紹介できるジムがほとんどないという状況
需要と供給のギャップが明確だったことが、決断を後押しした。
「今、出店したら独占できるよって話があって」
ただし、決断のすべてが計算づくだったわけではない。
- 独立を決意してから実際の開業までは約半年
- 当時は東京在住で、神戸の物件を現地で確認する機会がほとんどなかった
勢いと機会、両方が揃ったタイミングでの決断だった。
マンションの一室、固定費を抑えた開業の舞台裏
物件選定の軸は、明確だった。
- 大手競合の近くに出店すれば、その認知度を活用できると判断
- 資金に余裕がなかったため、固定費を抑えられるマンションの一室を選択
- 駅からの距離も重視した
「走り始めたら固定費が一番怖い部分になると考えていた」
選択肢自体も限られていた。
- マンション物件で、ジムとしての利用が可能な選択肢は2〜3件のみ
- 騒音への懸念は、どの物件でも共通の課題だった
- マンツーマン指導で危険がないことを説明し、契約にこぎつけた
開業直前には、想定外のトラブルも発生する。
- 銀行融資の審査で、物件契約書に「事務所としての営業」の記載がなく、審査が通らなかった
- 担当者に大丈夫だと言われていたにもかかわらず、結果的に融資は下りなかった
- 消費者金融も含め、あらゆる手段で資金をかき集めて開業にこぎつけた
理想的な開業とは程遠い、綱渡りのスタートだった。
無風の2ヶ月を越えて ― 契約率9割の理由
開業直後、岡崎氏を待っていたのは静寂だった。
- 最初の2ヶ月はほぼ無風。マンション物件のため看板を出すこともできず、ネットで見つけてもらう以外に手段がなかった
- 集客の中心はポータルサイト。SNS広告もまだ一般的ではない時代だった
状況が動き始めたのは、ポータルサイト経由の反応が出てからだった。
- 来店した顧客の契約率は9割超
- 大きな広告費をかけたわけではなく、コツコツとした積み重ねが集客につながった
- マンションの一室、男性1人という環境に来店する時点で、顧客側の期待値は一定程度高かったと分析している
契約率の高さを支えたのは、営業スタイルそのものだった。
- 体験時に最も深い悩みへその場でアプローチし、即効性のある変化を実感してもらう
- 即日入会の決断を迫るような強い営業トークは一切使わない
- 自身が受けてきた営業への違和感が、この方針の原点にある
「安心感、信頼感を感じてもらえる時間にするというのを大事にしています」
舞い込んだ話を形にしてきた拡大の仕方
事業拡大の経緯を尋ねると、岡崎氏は意外な答えを返した。
「僕から絶対に出したいと動いたわけではなかった」
2店舗目(西明石店)の出店も、その典型だった。
- きっかけは、不動産を所有する顧客からの「空いているのでジムをやりませんか」という声がけ
- 岡崎氏自身の判断で出店を決めた。ちょうど独立を考えていたスタッフがいたことも重なり、家賃条件の良さも後押しした
法人向けセミナーや障害児童向け体操教室といった事業の広がりも、同じパターンだ。
- いずれも先方からの相談がきっかけ
- 未経験の分野でも、まず引き受けてから対応する姿勢を貫いている
- ただし何でも受けるわけではなく、自身の理念に合うかどうかで判断している
スタッフとの出会いにも、共通点がある。
- 現在の業務委託スタッフは、大会での縁、元顧客がトレーナーとして独立したケース、大学時代のアルバイト先の先輩など、いずれも自然な人間関係から生まれている
- 意図的に採用活動をしたことはほとんどない
「動いたものが全て点となり、その点があちこちで繋がっていく感覚」
自分から仕掛けるのではなく、舞い込んだ縁を選び取り、形にしていく。だがその一つひとつを実際に現場で支えているのは、こうして集まった仲間たちだ。
岡崎氏は今回の取材でも、一人ではここまでの事業は絶対にやれていないと繰り返し語った。神戸と西明石、それぞれの現場に立つ仲間の存在が、岡崎氏の拡大の型を支えている。
「人生を動かす」という軸、大阪への新たな挑戦
事業が広がる中、岡崎氏は自身の判断軸を明確に持つに至った。きっかけは、先輩経営者からの一言だった。
「軸を立てないとぶれるよ」
そうして立てたのが「人生を動かす」というテーマだ。
- 自分自身の人生も、関わる人の人生も動かすという意味を込めている
- フィットネスは、その理念を実現するための手段の一つと位置づけている
- ダイエットの成功をきっかけに結婚した顧客、痩せて自信を持ち転職した顧客など、指導を通じてターニングポイントに関わってきた実感がある
この軸があるからこそ、規模拡大そのものを目的にしていない。
- 全国に店舗を持ちたいという願望は特にない
- 舞い込む話も、この軸に合うかどうかで判断している
一方で、現在の悩みも率直に語る。
- 神戸エリアでジムが増え、ポータルサイト経由の集客効果が薄れている
- 新規顧客の獲得が難しくなり、既存顧客・紹介中心の運営になっている
- 5年後、10年後を見据え、現場から育成へのシフトも視野に入れている
そうした中で進んでいるのが、大阪・福島での新たな展開だ。
- 大きな病院内の空きスペースを借り、リハビリとパーソナルトレーニングを組み合わせた店舗を計画
- 医療機関との連携を築いておくことが、今後の事業の幅を広げると見込んでいる
- 将来的にはトレーナーのコミュニティ設立や、法人向け事業の拡大も視野に入れている
独立を目指す人へ ― 見込み客を作ってから動く
これから独立を目指す人へ、岡崎氏が語るアドバイスは実践的だ。
- いきなり店舗を構えても、誰にも知られていなければ集客はできない
- SNS発信などを通じて、ある程度の見込み客を作ってから動くべき
- 資格取得や技術の研鑽も、並行して整えておく
物件についても、当時とは違う選択肢を勧める。
- 自身が開業した当時はレンタルジムがほとんど存在しなかった
- 現在はレンタルジムが増えており、まずそこで指導実績を積んでから店舗を構える方法もある
ただし、当時の自分の決断そのものを後悔してはいない。
「あの時に無理してでも出していなければ、今の自分はない」
現在の市場環境で同じ開業の仕方をするかと問われれば、迷わず否定する。時代に応じたやり方を選ぶべきだという冷静さも、岡崎氏の判断軸の一部だ。
取材後記
岡崎氏の経営スタイルは、二つの相反する要素の両立にある。
- 現場主義:管理業務より現場を選び、拡大よりも「人生を動かす」という理念を優先する姿勢
- 堅実な拡大:固定費を抑えた開業、舞い込む話を軸に照らして選び取る拡大の仕方
一方で、岡崎氏自身が語った悩みには、独立初期のトレーナーにも共通する課題が含まれている。
- ポータルサイト経由の集客効果が薄れ、既存顧客・紹介中心の運営にシフトしている
- 開業当初、数字管理よりも現場を優先し、後から経営の勉強会で売上とコストのシミュレーションを学び直した
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身体工房LIBERTEXとは

神戸市中央区北長狭通(三宮)に本店、西明石に2号店を構えるパーソナルジム。ダイエット・ボディメイクの指導を中心に、安全面への配慮と資格に基づいた指導を重視している。近年は法人向けセミナーや医療機関との連携にも取り組んでいる。

HP:https://www.libertex.training
instagram:https://www.instagram.com/taku.7.7.training/

