ピラティス指導者・白石聖子氏が、徹底的にこだわってきた、自分の顧客をつかむノウハウと、それを活用して広尾のスタジオを開業するまでの道のりを取材しました。
会社員時代から実践してきた、自身の価値を上げるセルフブランディング術、他のインストラクターに埋もれない集客術など、いますぐにでも真似したいトピックを話してくれました。
取材対象者:Studio by S オーナーインストラクター 白石 聖子氏
福岡県出身。2009年からインストラクターとして活動し、国内外のスタジオで15年以上のキャリアを積む。2024年12月、東京・広尾に自身のプライベートピラティススタジオ「Studio by S」を開設。
アパレル営業からインストラクターへ、そして独立という決断
白石聖子氏のキャリアの出発点は、ジムやスタジオの現場ではなかった。
- 大学卒業後、アパレル会社に新卒入社し、1年半営業を経験
- 「手に職をつけたい」「身体に関わる仕事がしたい」という思いから、ピラティスの資格を取得しインストラクターへ
- 福岡の専門スタジオでレッスンを担当しながら、スポーツトレーナー育成専門学校の講師やアカデミー運営、アパレル業務まで並行してこなした
独立は、最初から見据えていたわけではなかった。
「私はずっと自分は現場にいる人だなって思ってたので、運営とかは難しいだろうなと」
転機は、所属スタジオでの日々の積み重ねの中にあった。
- どの環境でも、所属先の数字にコミットすることを常に意識してきた
- 結果を出し続ける中で「これは自分で全部責任を取ってやってみよう」という思いが芽生えた
負けず嫌いな性分は、幼少期の家庭環境にも根がある。
「それで満足してるの?あなたならもっと行けるよ」
自分の力で結果を出し、自分の責任で判断する。この感覚が、独立という選択に自然につながっていった。
UAEでの1年 ― Facebookのつながりから生まれた訪問レッスン
結婚を機に、白石氏は生活の拠点をアラブ首長国連邦(UAE)へ移す。
- きっかけは配偶者の駐在。当初、現地で仕事をする予定はなかった
- 特にすることがなく、ジムに通い体を動かす日々を過ごしていた
転機は、思いがけない場所からやってきた。
- ジムで元気に体を動かす姿が目に留まり、「やたらと元気なアジア人がいる」と、現地の人から声をかけられる
- 住んでいた地域は小さな集落で、情報交換の中心はFacebookコミュニティだった
- そこで「ヨガやピラティスを教えてくれる人を探している」という投稿を見つけ、自ら営業をかけた
現地の文化に合わせて、レッスンの形も工夫した。
- 自宅で習い事やワークアウトを行うのが一般的な地域だったため、訪問形式のレッスンを実施
- 外では肌を露出できない文化的背景もあり、自宅への訪問は合理的な選択だった
- 並行して、女性専用のフィットネススタジオでも指導を行った
滞在期間は約1年。帰国後は神奈川・葉山を拠点に活動を再開する。この経験が「環境に応じて仕事を作り出す」という白石氏の行動様式を裏付けている。
「レアな自分」を演出する集客戦略
帰国後、白石氏は都内の複数スタジオを掛け持ちしながら、独自の集客戦略を実践していく。
- 大手スタジオ2つと個人パーソナルスタジオ1つ、合計3ヶ所を並行して担当
- グループレッスンでファンを作り、そこからプライベートレッスンへと導線を設計
戦略の核心は、意図的な「希少性」の演出だった。
- 同じスタジオに週2回以上は入らないと自ら決めていた
- 「この先生に習えるのはレア」という状況を作り出すことを狙った
独立を控えた時期も、この戦略は徹底していた。
- 独立前提でありながら、あえて自分から集客活動はしなかった
- お世話になったスタジオから無理やりお客様を引き抜くのではなく、きちんと自分にお客様がついていたのかどうかを確認する意味もこめて、何も言わずに現場を離れ、顧客自身に自分の名前を探してもらう状況を作った
グループレッスンの予約開始日、「その日を逃すと受けられない」という状況を作ることも、戦略の一部だった。
代行レッスンこそ最大のチャンス
集客戦略の中でも、もっとも独自性が高いのが代行レッスンの活用だ。
- スタジオには複数のインストラクターが在籍し、月に何度か担当講師が休む代行の機会がある
- 白石氏は、この代行レッスンに積極的に入り続けた
- 代行先の顧客の中から、自分のファンを獲得していった
この手法は、他のインストラクターにはほとんど見られないという。
- 指導者研修でこの話をすると、多くの受講者が驚く反応を見せる
- 平日昼間などの集客が難しい時間帯(アイドルタイム)でも、白石氏は諦めなかった
その根底にあるのは、独自の顧客理解だった。
- 「130人会員がいれば、自分の12人枠は必ず埋まるはず」という発想
- 顧客が口にする「忙しい」という理由を鵜呑みにせず、本当に来たいレッスンを作れているかを常に自問した
- 他のインストラクターは一切否定せず、「自分のところが一番」という気持ちは持ち続けた
代行という機会を、受け身ではなく攻めの営業機会に変える。この発想の転換が、白石氏の集客力の土台になっている。
「聖子先生らしい」空間を目指して妥協しなかった物件選び、内装は自分の手で
物件選びの原点は、駆け出し時代の記憶にあった。
- 福岡でインストラクターになったばかりの頃、窓が大きく天井の高いスタジオに憧れを抱いた
- 「いつか自分のスタジオを持つなら、あの雰囲気にしたい」という思いを持ち続けていた
物件探しでは、周囲の目も判断材料にした。
- マンションの一室や、古いビルを改装した物件も検討した
- 「白石聖子ならこういう場所でやるよね」と思われる場所にこだわった
- 過去に生徒の保護者から、レンタルスタジオの環境について懸念を伝えられた経験も、判断材料の一つになった
内装のコストには、明確な優先順位があった。
- 資金を最も投じたのは、顧客が実際に使うマシン
- 内装は自身と友人の手で、壁塗りも含めてDIYで仕上げた
商売道具に資金を集中させ、それ以外は自分の手で作る。この判断が、限られた資金の中での開業を可能にした。
競合を見ない価格設定、次に見据えるジャンル
価格設定の基準は、他社比較ではなかった。
- 「この金額ならワクワクして仕事ができる」という自分の感覚を軸にした
- 地域や知名度によって相場が大きく変動する業界の特性を踏まえ、あえて競合を意識しないことを選んだ
現在の顧客層にも、この価格設定は結びついている。
- 顧客層は10代〜70代と幅広い
- 白金エリアに住む顧客が多いことから、アクセスの良い広尾に開業を決めた
今後のキャリアでは、指導者育成と新しいジャンルの確立という2つの軸を見据えている。
- ピラティスは市場が急速に広がり、指導の質にばらつきが出てきていると感じている
- 欧米人の体格を前提に作られたメソッドに、アジア人特有の体の使い方の知見を組み合わせる研究を進めている
- 「ピラティス」という名前だけで戦わない、独自のジャンルを作ることを目指している
独立を目指す人へ ― とにかく修行しろ
独立を目指す人へのアドバイスは、率直だった。
- お金や知名度が目的なら「やめておいた方がいい」
- 自分の体を変えたいという思いが先にあり、お金は後からついてくるという順番なら「やるといい」
具体的な行動として挙げたのは、驚くほどシンプルだ。
- 良い指導者を見つけること
- とにかく自分の体で鍛錬すること
「今のインストラクターの子たちは、自分の体との向き合いが足りない」
良い指導者・良い先生の条件についても、明確な基準を持っている。
- 臨機応変な対応ができること
- 顧客の感覚を言葉にできる、言語化能力があること
- コツコツ努力を積み重ねられること
「知識量や技術よりも、最も大事なのは人としてのあり方だと思います」
技術やビジネスモデルの前に、まず自分自身の体と向き合う。この順番を飛ばさないことが、白石氏の一貫した主張だ。
取材後記
白石氏のキャリアには、二つの一貫した姿勢がある。
- 攻めの発想:代行レッスンへの積極参加、あえて集客しない希少性戦略など、常に自分から仕掛ける姿勢
- 諦めない執念:「130人いれば12人枠は必ず埋まるはず」という思い込みの強さ、そして「忙しいは嘘」と言い切る姿勢。アイドルタイムでも諦めなかった粘り
組織に属しながら、すでに独立後を見据えて動いていた白石氏。その姿勢は、環境や制度に頼るのではなく、自分の頭で仕掛けを考え抜くというシンプルな原則に支えられている。それは会社員時代も、広尾にスタジオを構えた今も変わらない。
dotnowは、こうした現場に集中したいトレーナー・インストラクターの管理業務の負荷を下げることを目的に開発している。
Studio by Sとは

東京・広尾にあるプライベート専門のピラティススタジオ。
マンツーマンでの指導を通じて、一人ひとりの体と向き合う指導を提供している。窓が大きく天井の高い、白石氏が理想としてきた空間づくりにもこだわっている。
HP:http://studiobys-tokyo.com/
Instagram:https://www.instagram.com/seiko.movement

