初月7.48回、12カ月目0.92回——ピラティス飽和論の本番は、集客ではなく「離脱検知」から始まる

ピラティススタジオは来年あたり飽和する、という声をよく聞くようになりました。店舗数の伸びを見れば、その実感は正しいものです。ただし飽和局面で最初に効いてくるのは、新規集客の競争ではありません。すでに在籍している会員が静かに離れていく速度です。個人スタジオが大手の物量に対抗できる場所は、そこにしか残っていません。

店舗数は1年半で2倍から3倍、需要はその速度では増えていない

マシンピラティスの出店ペースを実数で見ると、他業態では見かけない水準です。

ブランド名2025年1月時点2026年7月時点
zen place117150
Rintosull107260
URBAN CLASSIC PILATES69104
pilates K60200

1年半で2倍から3倍を超える伸びです。lulutoも2024年1月の13店舗から2026年には99店舗まで拡大しています。

一方で需要側の器はこの速度では広がっていません。笹川スポーツ財団のスポーツライフ・データ2024では、隣接種目であるヨーガの実施率は4.0パーセント、推計人口は419万人と報告されています。筋力トレーニングの1,675万人と比べれば、母集団はまだ小さい部類です。帝国データバンクによればフィットネス市場は2024年度に7,100億円前後と過去最高を更新しましたが、これは2019年度の7,085億円をようやく超えた水準であり、成長の主役は低価格のコンビニジムでした。

供給が年率で数十パーセント増える横で、需要は数パーセントで動いています。この差が飽和論の正体です。

参考:

  • [プライアスタ合同会社「2025年版マシンピラティス業界カオスマップ」]https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000072861.html
  • [趣味なび byGMO「【2026年度版】ピラティススタジオ店舗数ランキング」]https://coto.shuminavi.net/media/articles/10009
  • [笹川スポーツ財団「スポーツライフ・データ2024(速報)」]https://www.ssf.or.jp/files/LD2024_241111.pdf
  • [帝国データバンク「フィットネスクラブ・スポーツジム」業界動向調査(2024年度)]https://www.tdb.co.jp/report/industry/250516_fitness24fy/

「店が増えている」ことは「市場が育っている」ことと同じではない

ここで注意したいのは、店舗数の伸びの内訳です。急拡大しているブランドの多くは、ヨガスタジオを展開してきた事業者が母体になっています。既存のヨガ会員をピラティスに載せ替える形で店舗数が積み上がっているのだとすれば、市場そのものは見かけの店舗数ほど広がっていない可能性があります。

ピラティスブランド店舗数
(2026年時点)
運営会社同社が運営する
ヨガブランド
関係性
Rintosull260店舗超株式会社LAVA InternationalホットヨガLAVAヨガ最大手LAVAが新業態として展開
URBAN CLASSIC PILATES104店舗株式会社LAVA InternationalホットヨガLAVALAVAの「姉妹業態」と公式に説明されている
pilates K159〜200店舗超株式会社LOIVE(親会社:LIFE CREATE、東証グロース)loIve(ロイブ)2025年8月に社名をLOIVEへ変更し、ヨガとピラティスを同一資本で展開
zen place pilates150店舗超株式会社ZEN PLACEビクラムヨガ/ヨガプラス2003年創業時からヨガ・ピラティス両方を展開する複合型。「転換」ではなく当初から並走
luluto99店舗株式会社理学ボディ–母体はヨガではなく整体・接骨院チェーン(6年で91店舗展開後にピラティスへ参入)
CLUB PILATES74〜86店舗株式会社Wellness X Asia–米国ブランドのマスターフランチャイズ。ヨガ転換ではなく新規参入
STUDIO IVY PILATES100店舗超株式会社KRM–ピラティス専業として立ち上げ、ヨガ事業の記載なし
ピラティスミラー100店舗コナミスポーツ株式会社コナミスポーツクラブ(総合フィットネス)ヨガ専業ではなく総合フィットネスクラブがピラティス業態を追加

飽和が起きているかどうかを倒産件数で確かめようとしても、まだ答えは出ません。帝国データバンクによると、2026年1月から7月のフィットネスクラブの倒産は23件で、前年同期の19件を上回るペースです。通年では初めて40件を超える可能性があるとされています。ただしこの23件はフィットネス全体の数字で、そのうちパーソナルジムは6件です。ピラティス単独の倒産統計はまだ存在しません。

撤退はまず値引きとして表面化し、決算に反映され、最後に統計に載ります。体験レッスンの無料化や初月0円が常態化している時点で、都市部の駅前商圏はすでに採算の境界線に近づいていると考えるのが自然です。統計の裏付けが取れるのは、おそらく1年から2年先になります。

参考:

  • [帝国データバンク「健康ブームでも『フィットネス』苦境 倒産は過去最多ペース」]https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001406.000043465.html

飽和局面で先に枯れるのは、新規客ではなく既存会員です

飽和という言葉から連想されるのは新規集客の悪化ですが、経営を直撃するのはその手前です。会員の在籍率が落ちます。

会員データの生存分析を行っているプロフィットジャパンの分析では、月次の退会率が2.5パーセントであれば年間で約30パーセントの会員が入れ替わる計算になります。同社の事例では退会は在籍6カ月から10カ月に集中し、12カ月を過ぎると在籍率のカーブは平坦になっています。つまり最初の半年で会員は残るか去るかを決めています。

さらに示唆的なのが来店回数の推移です。月あたりの平均来店回数は初月の7.48回から6カ月目に2.44回まで下がり、12カ月目には0.92回まで落ちると報告されています。退会は突然起きるのではなく、数カ月かけて足が遠のいた結果として起きています。

ポルトガルのフィットネスセンターの会員5,209人を対象にした研究でも、退会を予測する最大の要因は不参加日数、つまり来ていない期間の長さでした。同研究に関する紹介記事によれば、会員の9割がスタッフとのコミュニケーションを重視している一方で、実際に対応を受けているのは43パーセントにとどまり、退会リスクの高い会員の半数近くはスタッフの対応で退会を回避できた可能性があると指摘されています。

参考:

  • [プロフィットジャパン「生存分析(会員在籍率)に基づいて、高退会予測群をフォローする」]https://www.profitjapan.co.jp/archives/4167
  • [Fitness Business「フィットネスクラブの退会を予測する為に重要な要因について」]https://business.fitnessclub.jp/articles/-/2079

個人スタジオが大手より確実に速く動ける、唯一の領域

数百店舗を運営するブランドは、標準化されたオペレーションで全店を回す必要があります。会員一人ひとりの来店間隔の変化に人の手で反応する運営は、規模が大きくなるほど難しくなります。

個人スタジオの会員数は多くても数百人です。全員の来店間隔を把握できる規模であることは、物量では勝てない相手に対する数少ない優位性です。具体的には三つの動きが取れます。

  1. 来店間隔が普段の2倍に伸びた会員を、毎週リストアップする。
    前回来店から何日空いているかを見るだけで、退会予備軍はほぼ特定できます。
  2. 在籍6カ月前後に必ず接点を作る。
    退会が集中する時期が事前に分かっているのであれば、そこにコンタクトを設計しない理由はありません。
  3. 予約キャンセルが2回続いた会員を検知する。
    キャンセルは来店回数の減少より早く現れる予兆です。

いずれも新しい施策ではありません。難しいのは、これらを毎週実行できる状態を作ることです。予約の記録が紙の台帳やLINEの個別のやりとりに散らばっていると、来店間隔の変化そのものが見えません。離脱検知の前提は、予約と会員情報が一カ所に集まっていることです。

飽和を前提にした運営設計を、今のうちに

出店ペースが需要の伸びを上回っている以上、新規会員の獲得単価は上がり続けます。その環境で経営を支えるのは、すでに通ってくれている会員の在籍月数です。

dotnow(ドットナウ)は、フィットネス事業者向けの予約・会員・決済管理システムです。月謝の自動引き落とし、会員管理、予約受付が初期費用・月額費用0円のFreeプランから利用できます。予約履歴が一元化されていれば、来店間隔の変化を見るという最も基本的な離脱検知は、今日から始められます。

詳細:https://dotnow.jp

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